鶏冠井題目踊(かいでだいもくおどり)

更新日:2018年7月2日

鶏冠井題目踊

 鶏冠井題目踊は、現在向日市鶏冠井町の石塔寺で毎年5月3日の花まつりに奉納される踊りです。
 鶏冠井町は、西日本ではじめて日蓮宗が広く普及した地としても知られ、住民すべてが法華の信徒という地域でもありました。
 この題目踊がいつ頃からこの地で始まったのかははっきりしませんが、鶏冠井町の伝承によると、鎌倉時代の末頃といわれています。当時、法華経を広めた日蓮上人の孫弟子にあたる日像上人が、京洛に布教をはじめられ当地で布教をされたとき、村人が昼食を上人にさし上げるべく用意をしていたら、炊煙が「南無妙法蓮華経」のお題目を描き出したそうです。この出来事をみた村人一同は大いに驚き、法華経の尊さを知るとともに、深くこれに帰依し歓喜踊躍したのがはじまりであるとされています。

京都府の無形民俗文化財に指定されています。

映像

鶏冠井題目踊の映像を見る(WMV:17.7MB)

作成:京都府ふるさと文化再興事業推進実行委員会
製作:株式会社CNインターボイス関西支社
注意:映像説明中の「説教石」は「説法石」の誤記です。

鶏冠井題目踊の特徴、伝承など

 題目踊の名称は、法華経の教義と信仰のすすめを説く内容であるとともに、各音頭の小節の切れ目切れ目に「南無妙法蓮華経」のお題目が繰り返し唱えられることに由来すると考えられます。このお題目が入るのが題目踊の特徴の一つであり、日蓮宗の縁起にふさわしい内容をもっています。
 踊りは「序ひらき」に始まり、「地築踊」「扇千鳥」「笠の流し」「扇まぬけ」「居やゐ踊」「三笠踊」「たんだ踊」「蓮華踊」「拍子踊」「扇踊」「志具美(しぐみ)踊」「結踊終(みつじゅ)」までの全部で13曲からなっています。曲の始まりは「ウォーイ、○○踊が所望じゃ、合点か」というように唄い出され、音頭に入っていきます。曲の終わりごとにお題目が入り、太鼓が打たれます。こうして13曲を次々に踊りますが、太鼓のほかは拍子木が入るだけで、他の楽器は用いません。
 また、踊りは流しの手振りを主体にした踊りのほかは曲ごとに異なり、扇や菅笠を手にして踊る姿は踊りというより舞いに近い趣があり、室町時代に流行した風流踊りを取り込んだものと思われます。
 出演者は、着流しの着物に手甲・白足袋に扇と菅笠姿の踊手13~18人(うち拍子木1人)と、太鼓たたき1人、踊手と同じ衣装に数珠を首からかけた音頭取り3~5人という配役構成で行います。
 題目踊の伝承によると、もとは鶏冠井地域の住民で長男のみに限られ、日蓮宗の信徒で保管している「御霊宝」のご開帳に当たって、南・北真経寺で交互に踊るのが決まりとなっていました。しかし、時代とともにこれらの行事が行われなくなるにしたがって題目踊を披露する場もなくなり、伝承が途切れつつあるなど廃絶寸前となっていました。しかし、昭和40年代に入ると地元の人びとによって題目踊復活の機運が高まり、鶏冠井題目踊保存会が結成されました。
 現在、石塔寺における年1回の奉納と日蓮宗の行事に披露する機会を得ながら、若手の育成を中心に題目踊の伝承に努力しておられます。
 題目踊は、鶏冠井のほかに松ヶ崎や修学院(いずれも京都市)と現在では数えるほどの地域でしか伝承されていません。しかし、これらの地域では輪になって踊る盆踊り形式で、鶏冠井の伝承と芸態において大きく異なります。そうした意味でも、鶏冠井題目踊は他に類のない貴重な伝承です。

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