更新日:2015年11月2日
今から500年以上も前のこと。
京の都は応仁の乱で戦乱のるつぼと化していました。
ここ乙訓の村々にも都落ちしてきた公家や民衆の姿が見られました。
ある夜のこと、暗い野良道を急ぐ数人連れが長い布で身を隠した一人の美しい姫を取り囲むかのように急ぎ足で歩いていました。
月明かりに照らされた姫のほおにはキラリと涙が、、、。「都の父君は、どうなされたであろうか」ちょうど、桂から寺戸へ入るころ、道が川に行きあたったのでした。
川は幅が2メートル近くあり、深く、そして橋がない。「せっかく、ここまで逃げ延びてきたのに、、、」身の不運とあきらめかかったその時に、川べりにそびえる椋の大樹から声が聞こえました。
「お前の供がもつ琴を橋のかわりにしてかけなさい」姫はハッとしました。「そのお声は、、、」なんと、声の主は日頃から信仰している大日如来のものでした。
姫はすぐ小者に命じて、愛用の琴を川にかけさせ、無事に逃げ延びたとのことです。その後、この場所に石橋がかけられ「琴の橋」と呼ばれて永年親しまれていたが、市道の舗装に伴いコンクリート橋に替えられ、今では知る人もない「幻の橋」となっています。