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第1回史跡長岡宮跡朝堂院西第四堂保全整備検討委員会:会議録

更新日:2015年11月2日

次第

  1. はじめに
    1. 教育長開催挨拶(開催趣旨説明)
    2. 委嘱状、辞令交付および委員紹介
    3. 出席者紹介
    4. 役員の選出(会長・副会長)
  2. 検討委員会
    1. 会長挨拶
    2. 向日市の文化財の活用計画について
    3. 史跡長岡宮跡の現状について(公有化と整備)
    4. 朝堂院西第四堂地区の整備に至る経過と事業計画について
    5. 本年度の工事概要について
    6. 来年度の事業計画について
    7. 次回開催日について
    8. その他

会議録

事務局職員
ただいまから、史跡長岡宮跡朝堂院西第四堂保全整備検討委員会を開催する。
開催にあたり、教育長からご挨拶を兼ねて開催趣旨説明をさせていただく。
教育長
委員の皆様方には、ご多忙の中、快く委員を引き受けてくださり厚くお礼申し上げる。本市では、今年度から3カ年にわたり朝堂院西第四堂跡の整備を進めていく計画があり、この検討委員会の設置に至った。
長岡京跡の中心地である長岡宮跡の保存と活用を、本市の文化財行政最重要課題として取り組んできた。現在まで、10,869.51平方メートルが国の史跡指定を受け、9,880.43平方メートルを公有化できたところである。しかし、今後、さらに史跡指定をしていかなくてはならないところの方がはるかに多いのが現状である。
今回は朝堂院西第四堂及び朝堂院南面回廊(翔鸞楼)跡について、一定の公有化ができたので整備を行うこととなった。整備の基本方針として、史実に忠実に従って遺構を守り、市民の方々が学習、癒しの場として活用できるような整備をしていきたい。できれば何か立体的に整備することによって、市民の方々の関心が高めるようにしたい。 予算が限られている中、市民の方々に喜んでもらい、全国の方々にもここに長岡宮跡があったことを認識してもらえるような整備をしていきたい。検討委員の方々にそれぞれの立場でご指導をいただくよう、よろしくお願いする。
《教育長より委嘱状、辞令交付及び事務局職員より委員紹介》
《事務局職員よりオブザーバー、事務局・実施設計会社出席者紹介》
事務局職員
会長の選出について、推薦をお願いしたい。
<少し間あり>
委員
事務局の方で、試案はないか。
事務局職員
事務局としては、中尾委員に会長をお願いしたい。皆様の意見をいただきたい。
( 全員賛成 )
事務局職員
中尾委員、いかがでしょうか。会長をお引き受けいただけないでしょうか。
<中尾氏承諾>
事務局職員
会長に中尾委員が選出されたので、ひとこと挨拶をお願いするとともに、副会長の指名と、これからの議事進行をお願いしたい。
会長
私は、難波宮跡や恭仁京跡、恵解山古墳等の保存と整備活用の事業に関わってきたこともあり、長岡宮跡の保存と整備について大変関心がある。これまでの経験を活かしたい。
それと副会長については、片山委員にお願いしたい。
( 全員賛成 )
会長
では、事務局より議題について説明をお願いしたい。
事務局職員
[配布資料をもとに説明]
会議次第2(2)から(4)について、一括して説明する。
向日市の文化財保護に対する姿勢について、説明させていただく。
本市には、丘陵部の遺跡と平野部の遺跡を結んで、自然・歴史文化軸にしたいという基本構想がある。その中で遺跡等文化財を通じて、市民が、自然や文化遺産と共生できるまちづくりができればと考えている。
具体的には、平野には長岡宮跡があり、丘陵部の竹林には前期古墳など多くの遺跡が残っている。それらの遺跡を、文化資料館を核にして、鉄道駅を結びつけて、保存活用していきたい。その他の遺跡についても、この2つのゾーニングの中から派生して保存してゆければと考えている。
中でも、長岡宮跡は現在までに1万平方メートルを超える史跡指定を受けているが、まだ中枢部全域が史跡指定を受けているわけではなく、現在も史跡指定を受けた長岡宮跡の買い上げを進めているところである。
同史跡は、昭和39年に史跡長岡宮跡大極殿・小安殿地区が初めて史跡指定を受けて以来、7回の追加指定を経て国有地・府有地・市有地・私有地を含め10,869.51平方メートルが史跡指定を受けており、そのうち約90%は公有化ができ、1,000平方メートル弱が私有地として残っている。公有化が済んだ地域を仮整備・本整備を行い、約75%近くが整備ができている状況である。
次に、個別の長岡宮跡の現状について、まず、大極殿・小安殿跡・宝幢跡については、昭和37年に初めて史跡指定を受けて、昭和39年に京都府で整備を行って以来、平成7年、10年、11年、14年と史跡の拡幅と土地の買い上げを進めて整備を図っている。この整備方針は、当初の整備に一体性を持たせるものである。整備手法については、大極殿・小安殿跡は基壇を20センチメートルほど立ち上げて柱表示しており、宝幢跡は2基復元して立体的に表示している。その他の未買収地域でも、所有者の理解を得まして宝幢跡を2基半ほど表面表示している。
内裏公園について、昭和42年に史跡整備を受け、昭和44年に京都府が整備を行い、回廊の基壇を少し盛り上げて柱跡を表示している。
築地公園については、昭和55年に史跡指定を受けて、昭和56年、57年で基壇に保護盛土をして整備を行った。 大極殿公園閤門・前庭地区については、平成14、16、18年に史跡指定を受けたが、現在は未整備で、今後も買い上げを進めていく。
これまで長岡宮跡の土地の買い上げに13億円ほど要しており、うち京都府では○○円ほど支出している。整備についても○○万円ほど支出しているが、まだ未整備地区があるのが現状である。
ところで、これらの長岡宮跡を包蔵する地域では、家が売却される機会などに発掘調査を行い、史跡級の重要な遺構が検出されることが多い。その際、土地の買い上げに追われると遺跡の整備がおぼつかない、整備をしないと市民に「遺跡の活用が促進されない」と批判を受けるということを繰り返している。これが、長岡宮跡の保存の現状である。この繰り返しでは、市民はもとより行政の内部でも、史跡の保存と買い上げや整備、活用について理解を得られにくくなるため、何とか活用を促進していきたい。
さて、この委員会で検討いただきたい整備地区は、朝堂院西第四堂、朝堂院南門、朝堂院南面回廊跡地区である。この地区は、平成4年、平成14年、平成18年に史跡指定を受けた。そして、平成5年から毎年土地の買い上げを進めた結果、一定の区切りがついたためである。この整備地は、面積が約3,500平方メートルで、南方約30メートルには阪急西向日駅があり、史跡 長岡宮跡が5カ所に点在する向日市の文化財の玄関口として、また、史跡長岡宮跡の全体の説明を行い、見学してもらう拠点的地区と考えている。そして、南北真経寺や向日神社などの違う時代、違う種類の文化財も見学してもらうことにより、丘陵部の古墳、そして向日市文化資料館の見学へと繋げてゆきたい。
つまり、朝堂院西第四堂跡地は、本市の遺跡案内、遺跡活用のランドマーク的な重要な地域であり、庁内の他の部局とも検討を重ねて、京都府・文化庁の理解と補助金も得て、整備に着手できるに至った。
会長
この委員会での検討地は、朝堂院西第四堂地区であるが、大極殿地区や内裏地区など他の史跡指定地も密接に関係しているので、朝堂院西第四堂地区に限定せず、関連のある他の指定区域についても意見を伺ったうえで、第四堂地区の個別の整備について検討に入りたい。
さて事務局の説明について、何か質問・ご意見を伺いたい。
委員
大極殿公園をはじめ、物集女車塚古墳など、すでに整備を終えている国や府の指定史跡があり、市民は何年にも渡って訪れたり、活用されていると思うが、評価・評判はどうか。
事務局職員
市民の長岡宮跡に対する思いは多様である。
また、観光などの面では、大極殿地域は桜の時期になると訪問者が大変多くなる。高さが低く横に枝分かれした珍しい桜の木があり、写真撮影をしたり子どもの遊び場として活用されている。ただ、説明板を設置しているが、この地が長岡宮跡の遺跡と思っている方は少ない。
ところで、遺跡巡りの面では、長岡宮跡は、阪急西向日駅を降りて半日コースで巡れる、1日コースなら丘陵を上って京都市の大原野まで足を伸ばせる、コース設定がしやすいところとの声がある。しかし、駐車場がなく、道も狭いので、大型バスで見学できないとの声もある。
地元の方には、多くの場所で発掘を行っているために、建物を建てれなかったり、設計変更をしてもらったりして開発・営業の障害となっていることもあり、快く思っていない方もいる。
委員
他府県から訪れる方も多いですか。
事務局職員
最近、市外・他府県からの訪問も多く、一時的に、未整備地にバスを止めてもらっている。
10月にも、この地で民間主催の三都三宮ウォーキングラリーが開催され、市外からたくさんの訪問があり大変好評を得た。
会長
今のことに関連するが、私自身も長岡宮跡のことをもっと知ってもらいたく、ミニコミ紙や会社の広報誌に長岡宮跡の紹介をしたことがある。
また、大学の公開講座で長岡宮跡に関する講義を行ったり、その講座参加者の中から希望者を募って、実際に長岡宮跡の現地を案内したりした。そのとき、平城京跡など他の整備地が1カ所にまとまってわかりやすい場所にあるが、長岡宮跡の場合、市街地の中に分散しており、遊歩道等相互の連絡がなく、土地勘のない方にとって場所がわかりにくいとの意見があった。市外から来たときにもう少し歩きやすい工夫をしてほしい。
実際訪れてみると、大極殿公園は、桜の時期など風情があってよいが、他の地域は、整備してあるとはいえ、現状はまだ荒れた状況ではないか。内裏公園や築地回廊は、説明板もずいぶん古びており、普通の方には、これが築地回廊の表示かわからない。
それと、内裏の正殿跡が発掘されて正確な場所がわかっているが、ここが内裏の正殿跡の正確な場所だという表示がどこにもない。現在は駐車場となっているが、内裏の正殿跡の正確な場所だという表示があれば、少しでも見る目が変わってくるのではないか。
さらに問題があったのは、東院公園に案内したときに、最新の調査成果での東院は別の場所にあったことがわかっているが、東院公園には、ここが東院だという説明板がそのまま残っているので、史実に忠実ではなく問題がある。文化財の保存・活用については、市民に史実を正確に伝えるということが基本なので、現状は問題があると考える。
今回、朝堂院西第四堂跡の整備が検討課題になっているが、できればそれだけに終わらず、他の史跡指定地の保存と活用についても前進となる形で、この朝堂院西第四堂跡の整備ができればと考えるので、みなさまの意見を伺いたい。
副会長
最も大切なことはそこに住んでいる市民が、史跡長岡宮跡を自分たちのものだという意識を持ってもらうことである。
ところで、大極殿公園や朝堂院西第四堂跡については、市外からもウォーキングなどでかなり人が来られてるのですが、最寄り駅の阪急西向日駅から朝堂院西第四堂跡の方向を見ても何も見えず、朝堂院南面回廊跡(翔鸞楼跡)も仮のフェンスがしてあるだけである。市は、このような整備計画があることを、このフェンスに看板を何枚も貼るなどしてもっと広報してほしい。阪急西向日駅から今回整備を行う朝堂院西第四堂跡へ行けば、他の遺跡のこともわかる最もメインとなる史跡公園を、で きるだけ早く整備してほしい。
そして、市民や市外の方々が、次にこの地を訪れた時はどうなっているか楽しみにできるように、整備・活用に協力していきたい。
委員
長岡宮跡は、まだ史跡指定地の面積も狭いし、場所が飛び飛びになっていて大変かと思うが、朝堂院西第四堂跡と朝堂院南面回廊跡(翔鸞楼跡)以外の未整備地についてはどのような整備計画があるのか。
というのも、平城京跡や藤原京跡については、面積が広いこともあり基壇整備をしたり、実物の建物を復元したり目で見える形にしたりしているが、遺跡の整備と活用はそれだけではない。
朝堂院西第四堂跡については、現在の計画では、基壇部分を高めて緑地公園にするようになっているが、市街地なので、緑地帯や公園みたいにすれば、子どもを遊ばせられるし、憩いの場になるという整備方法もある。あくまでそこが史跡であり歴史の場であることを認識してもらわないといけないが、それだけが前提ではなく、いろいろな活用の仕方を考えてゆかねばならない。
委員
観光という面から見ると、周辺の長岡京市や京都市大原野などは見所がたくさんあるが、阪急西向日駅や東向日駅で下車されるハイカーの方々などは、向日市には見所がないため、通過地点としてこの向日市を歩いているように感じる。よって、向日市で立ち寄れる場所を作ることが大切なので、この整備地、見せる場所、ある程度ゆとりをもてる場所が作り、長岡京跡として世間にPRできないかと思う。
委員
見学者の方が電車を降りて、大極殿公園の方向へ来られても、その場所がわからない。地元では道を聞かれたり、他の史跡の場所を教えてほしいとよく訪ねられる。
大極殿公園には看板は上がっているが、駅の近くに、史跡の場所がわかりやすい案内板があればわかりやすいと思う。
会長
朝堂院西第四堂跡は、西向日駅から近いこともあり、長岡宮跡について案内できるガイダンス施設にしようという考えもある。整備については、担当の向日市教育委員会の問題だけでなく、都市計画などいろんな問題がからんでくる。
委員
大極殿公園や内裏公園については、市の建設部が都市公園として管理している。おそらくこの朝堂院西第四堂跡についても、整備後、建設部の管理になってくると考えられる。そういう面では管理しやすい公園がよい。観光や史跡の価値を市民に知ってもらうことも大切だが、安全な管理を基本にしたい。
特に駅前の広大な土地なので、史跡のPRをするには非常によい場所なので、市外・市民の方々に、ここ長岡宮跡が長岡京市ではなく向日市にあったことを知ってもらうために、この場所の整備には期待している。
副会長
先に話のあった東院公園の表示看板については、どちらの部署の管理か。
委員
都市公園である東院公園については、市民や来訪者に周知していく看板表示も含め教育委員会で整備をされてから、建設部に所管替えされている。 看板表示について教育委員会とも相談のうえ、早急に対応したい。
会長
いつまでも市民の方に誤った情報を流し続けているのは問題なので、早急に正しい表示に直してほしい。
委員
市民生活部では、観光・商業振興を担当しているが、長岡宮跡を始めとする歴史資源や文化資源をネットワーク化して、市民の方々に目で見える形にして楽しんでもらうため、観光パンフレットや観光マップを作製し配布している。これらは公共施設に置いているが、西向日駅を降りてすぐ手に入れられる形にはなっていない。市内には鉄道駅が3つあるが、駅前に観光案内所の機能を設けられないかということがテーマになっている。この機会に、今回の整備地に観光案内所を設けることができないか、この検討委員会で意見を出せればと考えている。
会長
遺跡の保存については常に問題になるが、物理的な保存ということであれば土に埋めておけば一番よい。しかし、このような都市部において、保存のために多額の税金を投入して土地買収を行っている以上、単に地面に埋めておくだけでは市民の理解を得られないので、文化遺産として活用していこうという考えがある。遺跡の活用を図るときに、ギリシャやローマ遺跡のように地表に目で見える形で残っていたらよいが、朝堂院西第四堂跡のように、日本の場合はほとんどの遺跡が地下にあって、地上は何もなくただの原っぱのところが多い。そのような状態のままでは、遺跡の保存には支障がないだろうが、活用するという面では問題がある。活用するひとつの手段として、遺跡を整備するという手法がとられてるが、朝堂院西第四堂跡の場合、どのように整備すれば文化財を活用し、市民にとってもよいのか意見はあるか。
委員
朝堂院西第四堂跡の整備について検討することは当然であるが、この整備が成功するかしないかは、この整備地を結び、全体としていかにネットワーク化できるかではないか。ネットワーク化するには、ルート設定が必要だと思う。具体的には駐車場、道路をどうするか。どこをネットワーク化して、活用のための導線になる道路を、どう設定するか検討するのがよいと思う。この整備地の近辺は道路が狭いので、特に安全に気を遣わないといけない。建設部局の方にお願いしたいのは、都市計画として新しい道路を作ったり拡幅・改修したりする時に、教育委員会と調整をしながら、史跡の活用やネットワーク化することもひとつの要素として道路の改良を行うことである。カーブミラーをどこにつけるか、説明板の書き方など、文化財の活用するためのネットワークを組むという視点を持って建設の計画をたててほしい。
会長
そのことについて、庁内で連絡会議があるのか。
事務局職員
現在、庁内の関係部局が集まり庁内検討委員会というものを、2年前から不定期に行っている。どういう方向性で長岡宮跡が活用できるか、どういう形で他の部局から応援や意見をもらえるか検討しており、この検討委員会の内容を、庁内の検討委員会で検討して、設計に反映できればと考えている。
整備した場所や年代によって、その整備手法の違い、また未整備のところもある。表面表示だけの所、少しだけ盛り上げた所、何もないところがあるが、朝堂院西第四堂跡の整備が、今後の他の遺跡整備の方向性を定める指針になればと考えている。
会長
朝堂院西第四堂跡をどのように整備しようと考えているのか。
事務局職員
3カ年計画で遺跡を守り、市の玄関口としてPRできるようにしたい。平成19年度は、検出された遺構を保護するための基盤整備を行い、来年度以降は史跡公園として活用できる整備を行っていきたい。具体的なことについて、今年度の設計業務を委託している実施設計会社から説明する。
実施設計会社
今年度から、文化庁の補助金を得た向日市から、遺跡の整備事業を受託した。現在の整備の案として、公有化された整備地の範囲で確認されている遺構を、表示整備しようと考えているが、具体的に基壇を復元するのか、単に盛り土にして現状のように芝張りするのか、あるいは柱や史跡位置を表示するのか、今後具体的にご協議、ご指導いただきたい。
今年度については、基盤整備を行う設計をしている。保存活用施設、学習案内施設、休養・便益施設については、平成20年度以降の計画で全体設計を行っていくよう指示を受けている。
具体的には、基盤整備にあたる平成19年度については、現場にあるブロック塀や接続枡、現打水路撤去を行う予定である。次に造成工として表層土、保護砂、砕石層などを入れたい。盛土造成に伴う雨水排水工については、側溝や雨水集水枡、擁壁工、隣地との境界に擁壁をやり変えることを考えている。ただこれらを全て工事すると、かなりの予算オーバーになるので、この中で予算に見合うものしかできない。
なお、朝堂院西第四堂跡の南側部分は、遺構レベルから55センチメートルから60センチメートルに整備レベルを高くするための盛土をするため、バリヤフリー対応のスロープをつけないといけないので、現在の案とは少し変わってくる。また、現在の案では、確認された遺構を全て表示しているが、この検討委員会での意向を踏まえながら設計してゆきたい。
なお、盛土については、関係部局と協議された結果、整備後の雨水排水ができるだけ場外に流れないように、表層土と保護砂の間に、雨水排水調整機能を持った砕石層を設ける。これは、雨が降るとこの中に一時的に水がたまって一定量しか道路側に流れないようにするためのものである。
このため、当初の予定より工事費が増えた状況がある。
基本的に遺構面の上に保護層を設けて、文化財としての整備に軸足を置くため、遺構の保存を大前提としながら、発掘成果から得た史実に忠実な整備を考えている。市民の方の活用も念頭に置いた整備設計を考えている。
事務局職員
今年度は、土を入れて遺構を保護するための最低限度の工事、及び土留め、擁壁工事、雨水排水工事を実施し、次年度以降に委員の皆様のご意見を反映させていきたい。
なお、南側の朝堂院南面回廊跡(翔鸞楼跡)地では、5センチメートルから10センチメートル掘削すると瓦がでてくるため、この部分に基礎の必要なものを作ることは不可能に近い。なお、北側の朝堂院公園と比べ、60センチメートルほど土地が低いので、朝堂院公園と同じくらいの高さにしたいと考えている。本地を公有化して1年たつが、その間に雨水がすべて南側に流れてしまったこともあり、雨水の対策をしておく必要がある。その工事を今年度行い、来年度及び再来年度で、ご意見いただいた遺跡の表示等実施設計できればと考える。
副会長
南側に土嚢が置いてあるのは、水が流れないようにするためのものですか。
事務局職員
近隣に迷惑をかけないため、雨水を道路に出さないように土嚢を2段積んでいる。
委員
整備地の雨水の処理は、すべて南側へ排水するのか。
事務局職員
まだ、関係部局との協議が完全に終わっていないが、今のところ、朝堂院西第四堂の基壇跡を中心に南、東、北西、南西へと排水を振り分けたいと考えている。実施設計会社で測量した結果、現在の地形は朝堂院西第四堂の基壇跡を最高点に、放射線状に等高線が走っている。この等高線に沿った形で水をそれぞれ一番近い道路の水路へ持って行きたい。
南側は、いったんは雨水調整機能を持った砂利層に水をためてから、時間差で一番近い水路に水を流すようにしたい。
会長
整備地との隣地との関係でいえば、整備地は一段高くなるのか。
事務局職員
整備後は、朝堂院南面回廊跡(翔鸞楼跡)のある南側だけ約80センチメートル程度道路より高くなるので、その部分のみ保護盛土を留める擁壁を兼ねたスロープで道路から上がっていけるようにできればと考えている。他の箇所については道路との高さの差はあまり生じない。なお、周辺との境界確定は終わっている。
会長
周辺の民家との協議についてはどうか。
事務局職員
工事施工時に民家を回って承諾頂く予定をしている。
会長
盛土の中に保水性のある砕石層は、雨水がすぐ流れないように一定期間保水し、一度に流れてこないようにするわけですね。
事務局職員
透水シートで覆われた砕石が土と土の間に入っていて、排水溝から雨水が枡に流れ、枡からいったん保水性のある砕石層に入る穴を持っている。一番低い開所枡からもう一度水が出て行く機能を持っており、保水機能は十分ある。
会長
ところで、他の整備地、平城宮の整備で気をつけておられることはあるか。
委員
やはり水処理です。平城宮の場合は、非常に広大なので貯水設備を持っていて、一旦水をそこに貯めてから自然に引いていく形をとっているので割と楽だが、長岡宮の場合は市街地なので難しいと思う。 ただ、今の説明を聞いてると随分配慮されてると感じた。
実施設計会社
長岡宮跡については、遺構面の上に約10センチメートルの盛土があって、さらに約30センチメートルの単粒度砕石があり、さらに約15センチメートルの表層土がある構造である。それぞれの層の間に水は通すが泥は通さない不織布を敷いて施工する予定である。
会長
不織布の耐久性は大丈夫か。
実施設計会社
地表にさらされてると7年くらいだが、土中の場合は十分に耐久性はある。
会長
今年度に基盤整備を行い、来年度から上物の整備をするとのことだが、具体的に、上物の方針はいつ頃までに確定させたらよいのか。
事務局職員
本年度は、1、2月の約2か月間で造成・基盤工事を終え、3月上旬頃に次回の検討委員会を開き、ある一定の方針及び設計図の案をお見せして、ご意見をいただきたく考えている。次年度は、予算が成立し補助金申請を提出した頃と、9月頃の具体的な実施設計ができた時点で委員会を開催したい。そして、現地の工事に着手できればと考えている。次年度は、1年中工事しているのではなく、後半の何ヶ月間かだけ工事をしている。
なお、活用の推進のため、トイレを作りたいと考えている。また、朝堂院西第四堂跡の基壇を復元するにしても、階段の位置が不明確な部分があるので、オブザーバーでもある向日市埋文センターに階段の位置、幅等の確認調査を委託したい。その結果を設計に反映していきたい。
会長
階段位置について、調査時期はいつごろの予定か。
事務局職員
階段位置の調査は、次年度行う予定である。調査時期については設計に反映するために、京都府の了解も得て5月前半には始めたい。調査期間は、約4週間を予定している。
会長
現在の整備計画図では、朝堂院西第四堂跡については基壇を復元する、築地や南面回廊(翔鸞楼)跡部分については平面的な遺構表示に留めるというプランになっているが、市としてこういう形でやりたいという希望を持っているのか。
事務局職員
基壇は復元したいという希望を持っている。何もないところで子どもに遊んでもらうというのもひとつの考えだが、基壇を上げて、ここに長岡京の朝堂院西第四堂があったということを体感してもらいたい。そして、その基壇が文化財として以外に、野外ステージとして活用していただければありがたい。現在、この地域で星空ウォッチング、観月の夕べ、音楽祭などを開催しており、そういったものに利用できればと考えている。また、便益施設としてトイレは絶対作りたい。トイレがどんな形のものかはまだ白紙の段階であり、ご意見いただければありがたい。階段位置・高さ・仕上げや南門・南面回廊の整備についても、ご意見をいただければありがたい。
会長
時間的には、来年3月の上旬の検討委員会で、どのような整備の仕方をするのか具体的に検討するということでよいか。
事務局職員
本日お見せした整備計画図を、より具体的にして、ご意見を賜りたい。
会長
今まで整備されてるところについて、築地回廊や大極殿跡の基壇は、平面的な遺構表示にしているが、朝堂院西第四堂跡については、具体的な姿がわかるものは残されていない中で、平城宮や難波宮を参考にしながら、基壇を復元しようとしているのですね。 平城宮跡でも基壇復元をしているが、何か意見はあるか。
委員
わりとわかりやすくてよい整備計画図だなと思う。 長岡京は昔、日本の首都だったわけだから、基壇を整備することは大変良いことだと思う。ただ、朝堂院南面回廊(翔鸞楼)跡の楼閣部分については大変重要な発見なので、回廊地区とは区別して、その存在がよくわかるように整備してほしい。 また南門跡については市の道路部門と協議して、道路の色を変えて遺構表示し、整備地からの続きでここに遺構があるという表現ができればよりよいのではないか。
それと、まだ先の話になるのだと思うが、朝堂院の築地跡は平面表示だけだと思うが、一部立体的に復元してここに築地という建物があったと目で見える形にしたほうがよいと思う。
会長
今の意見は、今後の課題になりますね。 他に、何かご意見はないか。
副会長
こういう検討委員会を開いていることや、こういう計画があることを、工事が始まる前ではなく、今からでも看板・パンフレットなど現地に立てて近隣の協力を仰いでほしい。
会長
向日市として検討委員会を広報して、市民の方の意見をできるだけ反映させてほしい。
委員
現時点で市で考えてる遺跡散策ルートを明示してほしい。
事務局職員
市の産業振興課で「てくてくパンフレット」というものを年間8万部発行し、史跡めぐりコースを設定している。駅やSAに設置している。
《てくてく・向日市わがまち再発見などのパンフレットを配布》
なお、本日、文化庁の方も出席予定であったが日程が合わず、10月末に、本整備についての現地指導を得たので、随行いただいた京都府文化財保護課からその内容を紹介する。
京都府文化財保護課
10月末に文化庁の調査官に現地指導を得、整備について意見をもらった。その内容は、いろいろな整備パターンがあるが、それぞれの位置づけ・特徴を活かして整備したほうがよいこと、朝堂院西第四堂跡は、駅に近いのでインフォメーション的な役割が期待できること、市民の方が和める休憩できる施設にすることが大切とのことであった。他には遺構面との関係を考えて、擁壁をどのようにするのか、また、基壇復元するのか、基壇を立体表示するのかよく検討してほしいとのことであった。
委員
向日市といえば竹林が所々に残っており、整備地の一部を竹林にはならないのでしょうか。
会長
整備の際は、地下の遺構に影響を与えないようにすることが整備の基本かと思うが、竹はどうなのか。
委員
私は墓地を管理しているが、竹は根が大変強くコンクリートを超えてくる。隣地が住宅地なので賛成できない。
会長
教育次長、何かご意見は。
教育次長
本日は貴重なご意見ありがとうございました。
現在、市全体のまちづくりの中で、北部の再開発の話が出ているが、南部の西向日地区から、東向日地区にかけての地域は、歴史のまちづくりをしたいと考えている。現地は西向日駅のすぐ近くだが、そこが観光のスタート地点になるというイメージを持っている。それぞれの史跡地が、点と点ではなく、線で結んでいけるように整備していければと考える。
まち全体としてどのようなイメージを持って整備していくかが課題であると考える。
会長
今回の整備はどうするか以外に他の史跡とも関連するので、全体の中で個々でどう整備していくか、またこの機会に他の地域の再整備もこの機会に検討して、史跡の保存と活用が十分できるような形にしていければと思う。
これにて検討委員会を閉会する。
事務局職員
本日はこれにて閉会する。次回の開催については、あらためて後日事務局より案内する。
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ファクス 075-931-2555
教育委員会 教育部 文教課へのお問い合わせ

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