更新日:2015年12月1日
平成22年10月19日
向日市長 久嶋 務
一昨年秋の世界的な景気の後退から、我が国経済は、微(かす)かな回復の兆しが見えつつあったが、脱却できないデフレスパイラル、最近の急激な円高傾向は、再び、景気低迷に引き戻される不安を広げているとともに、高い失業率、長引く新卒者の就職率の低下など雇用情勢についても深刻な状況が続いている。
また、世界第2位の経済大国の座を明け渡すことが確実視される我が国では今、少子長寿社会の到来、人口年齢構成比の変化、さらに、人口減少社会に突入するなど、今まで、我々が遭遇したことがない難局の時代を迎えている。
さらに、住民ニーズは複雑・多様化し、対応すべき行政サービスは増加する一方、景気の低迷、地域間経済格差の拡大などから、国・地方の財政状況は当該年度の歳入だけでは財源を賄うことは程遠く、財源不足を補うために発行した負債残高が増加し、国・地方を取り巻く財政環境は異常な事態を招いている。
このような中、平成21年度の本市の決算は、これまで不測の事態に対応できない、また弾力的な予算編成を行う余地がほとんどない状況であったが、4年連続して財政調整基金に積み増しをすることができ、基金残高も10億円の大台を超え、次年度以降に財源を引き継ぐことができたところである。
しかしながら、本来は起債できない特例債・臨時財政対策債の発行により、黒字財政を維持したのが現実であり、その結果、行財政改革の努力によって削減してきた本市の市債残高は、3年ぶりに増加へと転じ、さらに、現在の社会・経済情勢、国と地方の行政執行体制が現状のままでは、今後も、負債は増加するものと予測せざるを得ない。
本格的な地域主権時代を間近に控え、権限移譲、財源移譲による行政執行体制の再編により、住民に一番身近な基礎的自治体である市町村の役割はますます重要なものとなり、自己決定による責任ある行政執行が求められている。
本市では、将来的展望も含めた、この厳しい社会情勢、財政状況の中で、平成22年度からスタートした「第5次向日市総合計画」を確実に実行し、「活力とやすらぎのあるまち」づくりに取り組んでいかなければならない。
このため、市民サービスをより充実し、持続可能な都市経営を行う手段として、新たに「向日市行財政改革プログラム」を策定したところである。
平成23年度の財政見通しは、さらなる市税の減少が予想される一方で、国の三位一体の改革により大幅に削減された地方交付税の復元・増額は不透明な中、引き続き臨時財政対策債へ多額の振替えがなされることが予想され、一般財源の増加は期待できず、市債残高は引き続き増加するものと考えなければならない。
一方で、歳出では、積極的な行財政改革により削減してきた人件費も、今までのように大きな削減効果は期待できず、さらに少子化対策、高齢化対策、医療などの扶助費、また、市債残高の増加による公債費などの義務的経費が増加し、一層の財政の硬直化が進むことが予測される。
加えて、安心・安全、教育、社会資本整備、環境などの各施策、老朽化している公共施設の維持・改修など、今後、行政需要はますます増加することを覚悟しなければならない。
我々、市町村は、住民福祉の向上を究極の目的とする住民に一番身近な行政機関であり、深刻な財政状況の中にあっても、各職員の創意・工夫と智恵を集結し、市民生活を守る最後の砦として機能していかなければならない。
また、可能な限り無駄を省き、“最短距離”で究極の目的である住民福祉の向上を達成するための努力を惜しむことなく、市民ニーズを的確に捉えた予算を編成しなければならない。
こうした考えを全職員が改めて認識し、平成23年度予算編成にあたっては、次の基本的事項・個別的事項を徹底し、一層の財政健全化に努めるものとする。