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教育長賞(中学生の部)

更新日:2015年12月25日

妖怪アパートの幽雅な日常4を読んで

勝山中学校2年 金内 さよ

 この物語の主人公・稲葉夕士は、運送会社でアルバイトをしている。そこで一緒に働いていた二人の大学生のことが、強く印象に残った。

 夕士たちの職場は、みんな仲がいいからよくしゃべる。本当に人間関係に恵まれた場所で、もし自分がアルバイトをするなら、こういう所で働きたいと思った。夏休み、その運送会社に、五人の新しいアルバイトがやって来た。しかし、その内の三人はすぐにやめてしまい、川島と佐々木という二人の大学生だけが残った。この二人が、全くしゃべらないのだ。夕士が挨拶しても、ちょっと頭を下げるだけ。もちろん、正社員のオジサンたちともコミュニケーションをとろうとしない。言われたこと以外のことはやらないし、分からないことを訊いたりもしない。休憩時間も、ずっとメールをしている。つまり、川島と佐々木は、知らない人や親しくない人とコミュニケーションをとるのが苦手なのだ。私自身もそうだから、二人の気持ちは何となく分かる。きっと二人は、心の中では正社員のオジサンや夕士たちと、仲良く話をしたいと思っていたのだろう。しかしそれがなかなかできないから、よけいにメールに没頭するのだ。そんな二人の姿が、部活で男子に囲まれ、あまりしゃべることができない自分と重なった。

 ある日、川島と佐々木に小さな変化が起きた。夕士から缶コーヒーをもらった時、ちゃんと「ありがとう」と礼を言い、さらにそのコーヒーをおごってくれたのがオジサンたちだと知ると、その人たちみんなに向かってお辞儀をしたのだ。当たり前のことだが、川島と佐々木にそうされたのはオジサンたちにとって嬉しかっただろうし、誰よりも喜んだのは川島たち自身だと思う。物語の中で、ある人がこう言っていた。「言葉は身体がともなってなきゃだめ」「本当の自分というものは、少しずつ体感して、積み重ねて積み重ねて作ってゆくしかない」と。本当にその通りだと思う。川島も佐々木も、暑い中働いて疲れていたところに冷たいコーヒーをもらった。そこで出た「ありがとう」は、二人の身体の底から出た言葉だと思う。そういった言葉や体験を積み重ねて、少しずつ自分ができていくのだ。私にも、自分を作ることができるだろうか。そう考えた時、中学生や高校生の時だけでなく、いくつになっても色々な体験をして、色々なことを感じることが大切なんだと気づいた。

 その変化から数日たったある日、事件が起きた。発送した荷物の内、天地無用の荷物がいくつか逆さに積んであったのだ。川島と佐々木のミスだった。「天地無用」の意味が分からず、それでも訊かなかった結果だった。分からないこと・変だと思うことを、そう思っても無視するのは私もよくある。何となく流して、忘れてしまうのだ。私の場合、そのせいで自分や周りが取り返しもつかないほど困ったり、迷惑したことは、今までは無い。だからこのままだと、分からない・変だと感じることすら忘れてしまいそうな気がする。そうなる前に、取り返しがつかないことが起こる前に、直さないといけないと思った。どうすれば直るのか、ハッキリとは分からないけど、まずは、分からない・変だと思った時、すぐに知っていそうな人に聞くようにしようと思う。あとは、実践で体感して積み重ねていくしかないのだ。

 その後、色々なことがあって、その度に職場のオジサンたちの話−人生の大先輩たちの話を聞き、川島も佐々木も少しずつ自分からコミュニケーションがとれるようになっていった。特に、オジサンたちの怪談話を聞いてさらに距離が縮まったのは、プロの生きた話を聞いて、本当のプロを感じて感動したからだと思う。お盆明けには、田舎からの手土産を持って帰ってきたばかりか、みんなに土産話もできるようになっていた。私は、このことは二人が「変わりたい」ともがいてあがいた結果だと思う。夕士は、そんな大げさなことではないと言っていたが。

 これから私も、川島や佐々木のように、色々な経験をして、体感して、積み重ねていきたい。そして、親しい人とも、親しくない人とも、知らない人とも、ちゃんとコミュニケーションをとり、話せるようになりたい。そのことによって、自分は十分変わると思うし、自分の世界も広がると思う。このようなことに気づかせてくれたこの物語に、本当に感謝している。

読んだ本

「妖怪アパートの幽雅な日常4」

著者

香月日輪

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