本文
向日庵(旧寿岳家住宅)【こうじつあん(きゅうじゅがくけじゅうたく)】は、阪急西向日駅の東側にある西向日住宅地に所在します。
西向日住宅地は、昭和3年に開業した鉄道・新京阪線(現在は阪急電鉄京都線)の西向日町駅(現在は西向日駅)の周囲に、昭和4年頃から田園都市構想に基づき造成された郊外型住宅地です。
当時は意匠を凝らした住宅が並び、多くの学識者や実業家、京都・大阪へ通勤するサラリーマンが移り住み、モダンで文化的な生活を営んでいました。
現在も当初から残る噴水公園を中心にして、街並み景観を生かした散策道などが整備されています。
向日庵の主屋の設計は京都帝国大学出身の建築家・澤島英太郎(1904-1945)、施工は明治期に京都で創業された熊倉工務店によるものです。
木造2階建て、中廊下型の典型的郊外型住宅で、換気及び通気の徹底、造り付け家具の工夫など、住環境に配慮した建築装置が充実しているのが特徴です。
向日庵は英文学者の寿岳文章(じゅがくぶんしょう)(1900-1992)・静子夫妻の自邸として昭和8年に建設されました。
当時の上棟式の写真及び寿岳夫妻による転居の挨拶ハガキから、昭和8年に完成したことがわかっています。
当初より寿岳夫妻の出版活動の場として「向日庵」と呼ばれ、現在でもその愛称は地区に広く親しまれています。
地区における数少ない昭和初期の住宅として、西向日住宅地の良好な景観を構成する重要な建物でもあります。
令和7年(2025年)3月13日に建物と門及び土留が国の有形文化財に登録されました。
上植野町浄徳
個人